掴み掛かった相手は笑っていた。

狗、と。
さらりと告げる唇に目を釘付けられた。

侮辱のニュアンスを含ませもせずにその言葉で自分を呼んだ。
と気付くのに少し掛かった。
そして気付いた瞬間ランサーは再び襟元に手を伸ばた。
怒りに任せて。
が、ギルガメッシュの視線は一oも動かない。
目を細めて微笑するばかりだ。
薄ら寒い。
ぞくりと背中に走った物を意識せずにはいられずそれでも否定する。
自分が冷や汗を流したなどと、思いたくは無かったのだ。
すっとギルガメッシュは間を詰め懐に入ってきた。

「…傷が」

先ほど何のモーションも無しに強か殴られた口元。
それをギルガメッシュは見ていたのだと理解する。
……ズキズキ痛む傷が熱を帯びる。
手の平がそっと伸びても、ランサーは動けなかった。
出来る筈の事が出来ないのは、畏れの所為か。

「貴様には酷く似合う」

爪が肉に食い込ませてきた。
傷口は容易く新たな血を滲ませる。
く、と声が出た。
それを聞いてまた一際深く抉られる。
多分今まで経験して来た物から考えればそう大した事のない痛みだったのに、
ランサーは怖気を感じていた。


「……汚れたぞ」


……差し出された指に恐る恐る舌を伸ばす程度には。






















撃の描いた金槍に入が素敵ssを付けてくれました。
金の性格が撃的に理想的で堪らないです。
【撃】