infection


































 街には無駄にネオンが輝いている。
 が、一歩路地に入ってしまうと驚くほど暗くそして人目に付かない。
 現実から遮断されたその奥、二つの陰が白っぽく、浮かんで見える。


 ラフな派手な色合いのシャツの男の背中に、草臥れた感じスーツの足。
 ぱっと見、都会には珍しくも無い暴力の振るわれる現場と見て取れた。
 そんなのは真夜中の街には珍しくもなんとも無い。
 万が一目撃者が居ても係わり合いにならないようすぐさま立ち去る事になるだろう。
 しかし、違う。


 二人の男は、ぐちゃぐちゃに睦みあっている最中だった。










 スーツの男…衛宮切嗣は壁に背中を押し付けたまま腰を担ぎ上げ、向かい合い突き上げてくる男の、
 不規則な吐息を首筋に感じながらぼんやりと思う。


 (少し若かったかな、思っていたより)


 飲み屋で見た時はこなれていそうだと思ったし、きつい性格をしてそうで良いな、と思ったからこ
 うなったのだが、始まってみれば彼はがっついてはいるけど意外と素直で従順だった。
 優しいセックスが欲しかった訳ではなかったので少し肩透かしを喰らった気分がした。


 (まぁ、悪くは無いかな)


 若い頃ってこんな感じだよなぁ、と思い起こしながら何だか気恥ずかしい感じが心地よい。くす、
 と笑う。


 「…何笑ってんの」
 気配に気付いたらしい男が、目を合わせてそう言った。
 「ん…いや?」
 微笑むとキツめの目尻が鋭く睨んで来た。
 「んだよ、あんた……こっちはこんなになってんのに凄い、余裕かまして」
 こっち、とその部分を爪で抉る。男との腹に擦りあげられるだけで放っておかれていたそこは、触
 れられただけでもくるものが有るというのに、流石に切嗣も息を詰まらせた。


 「今なんか…じわって濡れたみたいに纏わり付いて来た…」
 「……意地悪だね」


 拙い言葉で興奮を伝えようとする様に、切嗣は困ったように腰を少し捻ってやる。
 その刺激に中でびく、っと大きくなったのが判った。


 「あ、んたすご、やらしいのな…」
 目を細めて顔を赤くした彼を切嗣はますます気に入った。


 ふと気付くと、彼の髪から汗と青年らしい柑橘系のコロンの香りがした。










 (…そういえば)


 ――あの男、からは匂いがしなかったな、と思い出す。
 始終身体を強張らせていた。


 表情すら信じられないといった感じだったから、丁寧にも目を、解いたネクタイで覆ってあげて「女
 の人としていると思えばいいよ」と言ってやった。


 なんどか「神よ」と小さく呟いて、自分の中で放ってやっと全身の力が抜けたようだった。


 終って覆いをとった覗いた目は真っ赤に染まっていた。
 小刻みに震え、それから目を両手で蔽って。


 彼は空を仰いで唇を開いた。


 (……何だったっけ)






 ああ、そうだ。





 (「……地獄に堕ちろ」だったっけ)






 そんな、呪いの言葉。





 ……刺激的すぎる。









 「また、笑ってる」


 彼は顔を覗き込みながらそう言う。そんな仕草をされるとますますどこか幼さが覗く。
 本当に、もしかしたら割と若いのかもしれないな、そんな事を今更思う。
 丸い輪のピアスが二つ付いた耳の軟骨を捻りながら切嗣はふふ、と改めて笑った。


 「あんまり顔を見るもんじゃないよ…こんな年寄りの顔見ても面白くもなんともないだろう?」
 言ってやると少し動揺する気配を見せる。
 彼が誘いに乗ったとき『あんたみたいにトウが立ったのと寝るの初めてだよ』と言ったのを揶揄し
 たと思ったらしい。


 切嗣自身は、少しも気にしてないのに。


 「……判るだろ」
 感じている事位。
 「…そりゃあね」


 言うが早いか彼はまた動き出す。
 性急に、何度も敏感な所を抉られて流石に切嗣も声を上げる。
 ふ、あ、っ。
 それを聞いて彼は大胆に掻き回す。下腹部はどろどろになっていた。










 もう、ヤバイ。達してしまいそうだと彼が苦しげに言うので良いよ、と言った。
 中に出したいと言われたので構わないよと言った。


 どちらも別に大した事じゃあ無い。


 でも、と切嗣は耳元で吐息混じりにお願い、と言った。


 「僕はまだだから、その後は遠慮なく乱暴にしてくれないかな…?」


 無理な体勢引っくり返して壁に手を掛けて。
 無理なく回復した彼から背後から言葉通り激しく突き上げられてやっと切嗣は達した。











 身支度をさっさと整えた切嗣に残る行為の痕と言えばほの赤く染まった耳元と目元位で、それを男
 はじっと見続けていた。
 壁に寄り掛かりながら、切嗣が乱した開いた胸元もそのままに。
 視線はどこか照れ臭い。


 「…何だい?」
 「連絡先、教えてよ」
 「…あんまり定まってないから」


 駄目、と言うと男は少し笑いながらそんな感じはした、と壁を軽く蹴る。
 立ち上がり様に冗談交じりだけれど本気が滲む声で


 「なぁ、また会ってよ…頼むから」
  切嗣は首を振った。
 「それも、駄目。もう君とは寝ない」
 「なんで?俺そんな下手だった?」
 「そんな事は無いけどね。これは僕の問題」
 「何それ」





 「僕は淫乱だから」





 直接的な言葉で、蔑む言葉でそう表現して。


 したくて仕方ないのをコートの中に隠して、街を漁って出会ってセックスをして。
 そういう出会いから何かを始めるなんて不毛だと、この子が気づいてくれれば良いと切嗣は思う。


 「…実の所、今夜も君が三人目」


 それで今日はやっと、十分だったって位で。










 ……だって血を見たら興奮するとか言うじゃないか、ねえ。
 それが人あろうが人ですら無かろうが僕は興奮したんだ。


 持て余したんだ。










 「一度寝た相手に僕は二度と勃ちゃしないんだよ……可哀相だろう?」





 呆然とした男を背にして切嗣は踵を返した。
 此処ら辺悪くなかったな、路地の先はなんてネオンが眩しい。


 「じゃあ…これだけ」

 唇がちょん、と触れるだけで去って行った。
 彼の目が切なそうで、可笑しい。


 「……あはは」


 別れのキスが最初で最後だなんて洒落てるね。
 思いながら切嗣は彼の腕を引っ張った。





 「……ん」





 深く絡めるセックスの雑じるキスで、仄かな純情など君は打ち消すべきだ。





 応えて来た舌の感触は快感の去った身体には砂を噛む様だったけれど、
 切嗣はゆっくりと目を瞑った。










 (楽しい時間を有難う、…御馳走様)













+++++
というわけで若い男×養父萌えが高じてこんな事になりました話。
やりすぎですがゴーサインでました!

○養父は行きずりの男と寝る。
○養父は同じ男とは二度と寝ない。
○神父も食ってる(騎乗位)。

ビッチだけれどどこか聖母…みたいな(キラキラ…)。
撃と入は間違った方向に養父受です。

(入)